心をつかまれるような風景おすすめ度
★★★★★
eb!は以前もビーム本誌とは特に関連のない作家の単行本をいくつも発行してくれました。それらのものに共通して言えるのは、どれもマイナーながらもすばらしい漫画だということです。そういうわけで私は彼らに信頼を置いてこの上巻を購入しました。
読んで思いました。これは素晴らしい漫画です。ですが、どう素晴らしいのかをうまく説明することはできません。私の表現力が乏しいのもあるでしょうが、それほど言葉で表現しにくい良さを持ち合わせている作品なのです。なんとか試みてみましょう。舞台は日本のどこかにある田舎、夫・利平に先立たれた「利平さんとこのおばあちゃん」が主人公で、各話はその田舎で起こるちょっとした事件や変わったことを中心に描かれていきます。すっきりした読みきり形式で、ゆっくり・じんわりと楽しむことができるでしょう。こうした雰囲気は最近人気のこうの史代さんの作品にも通じると思います。
この物語にある田舎の風景はまさに「ステロ」なものです。おばあちゃんは丸い眼鏡にお饅頭のまげ姿に割烹着ですし、住民の口調も標準語ではありません。見合い婚も嫁入りの風習も当然のように行われていますし、住民同士はすべて顔を見知っている仲です。こういったものすべてが法月さんのやわらかく暖かい線で描かれており、物語はどれもしんみり、一作一作に読む者の心に届くものがあります。まだ20代前半の私にとってもこういう風景はなぜだか懐かしく思えてしまうのはなぜでしょう、やはり田舎というのは人の心を惹きつけてやまない何物かを抱えているのでしょうか。
おばあちゃんの回想によって、利平さんは故人にもかかわらず却って存在感を強めています。物語の中にもあったとおり、こんなに愛されているおじいさんは幸せ者です。そして、他人のことを放っておけない、正直で時には頑固でもあるおばあちゃんも村の人々に非常に愛されており幸せそうです。本当の幸せはこういったところにあるのかもしれません。
読んで決して後悔させない作品です。なぜ連載当時そこまでの知名度に至らなかったのかが不思議なくらいです。読む者すべてを久しく感じることのなかった気持ちに誘ってくれる、すばらしくやさしく美しい物語なので、ぜひご一読を。
はっきりいって、すさまじい出来です。
おすすめ度 ★★★★★
とても面白いじゃないですか
。従来の伝統を引き継ぎつつ、バランスがうまくとれてます。
買って良かったと思います。